
相続税の土地評価には、「路線価方式」と「倍率方式」という2つの方法があります。
路線価方式は主に都市部の土地を評価する際に用いられますが、計算手順を誤ると相続税額に影響が出るため、正しい理解が欠かせません。
本記事では、路線価を使った土地評価の流れと基本的な計算方法について解説します。
この記事の監修/取材協力

古尾谷 裕昭 税理士
相続専門の税理士法人(VSG相続税理士法人)の代表税理士。同事務所では、年間3,500件の相続税申告を行っており「99%税務調査が入ってこない」「税金を可能な限り安く」「親身に寄りそった対応」という品質で、元国税調査官を招き入れた体制のもとサービスを提供している。

近藤 洋司 税理士
VSG相続税理士法人横浜オフィスの代表税理士。
税理士になる前は不動産の仕事をしており「誰よりも不動産に詳しい税理士になる」という志のもと税理士になる。不動産の評価にとても強い。
はじめに:相続税の土地評価はなぜ「路線価」が重要なのか
「路線価」は、相続税や贈与税の土地評価額を算定する際に用いられる指標です。
相続税は相続財産に対して課される税金であり、相続財産の価額は相続開始時点の時価を基準に評価します。
しかし、相続人などの納税者が土地の時価を正確に把握するのは容易ではないため、相続税の申告の便宜および課税の公平を図る観点から、国税局(所)は毎年、土地評価の基準となる路線価を公開しています。
相続が発生した場合、路線価が設定されている地域では、この路線価を基準として土地の相続税評価額を計算することになります。
路線価を確認しなければ土地の評価額を算定できないため、相続税申告において路線価の把握は欠かせません。
そもそも路線価とは?知っておきたい4つの土地価格とその違い
1つの土地には、目的に応じて4種類の価格が存在します。
路線価を用いた評価額は、実勢価格や公示価格など、他の土地価格とは性質が異なるため、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。
路線価の基本
路線価は、道路ごとに標準的な宅地の1㎡当たりの価額が設定されています。
たとえば、10万円の路線価が設定されている場合には、10万円に土地面積を乗じることで概算の評価額を求めることができます。
(例:10万円×100㎡(面積)=1,000万円)
路線価が設定されている「路線価図」は国税庁ホームページで公開されており、相続税を計算する際は、路線価図で評価対象地が接している路線価を確認します。
なお、同じ地域にある土地でも、接する道路が異なれば基準となる路線価は変わるため、評価する際に用いる路線価を正確に確認することが大切です。

引用:令和7年分の路線価図
路線価と他の地価指標(実勢価格・公示価格・固定資産税評価額)の違い
土地の価格には、「相続税評価額」「実勢価格」「公示価格(公示地価)」「固定資産税評価額」の4種類が存在します。
相続税評価額は、路線価(または評価倍率)によって求めた評価額をいい、路線価は公示価格のおおむね8割を目安に設定されています。
実勢価格は、市場で実際に売買が成立した際の価格をいいます。
相続税評価額よりも高くなることが多いですが、売手・買手の交渉状況や不動産の個別事情によって価格は変動します。
公示価格は、適正な地価の形成に寄与するために設けられている指標です。
公共事業用地の取得価格算定の規準などとして用いられており、国土交通省は毎年3月に1月1日時点における標準地の価格を公示しています。
固定資産税評価額は、固定資産税の課税の基準となる評価額です。
公示価格の7割程度に設定されているため、相続税評価額よりも低くなるケースが一般的です。
各指標は、目的や算定方法が異なるため、同じ土地でも価格が一致するとは限りません。
そのため、相続税を計算する際は、用いる指標を誤らないよう注意が必要です。
路線価がない土地は「倍率方式」で評価する
倍率方式は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて算出する方法です。
路線価はすべての土地に設定されているわけではありません。
都心部から離れた地域では路線価が設定されていないことも多く、そのような地域にある土地は倍率方式で相続税評価額を計算します。
評価倍率は地域や地目によって異なるため、国税庁ホームページにある「評価倍率表」で土地ごとに確認します。
路線価方式に比べると計算方法はシンプルですが、固定資産税評価額が基準となるため、評価する際は事前に固定資産税評価額を確認できる書類を用意する必要があります。

引用:令和7年倍率表
【図解】路線価の調べ方と路線価図の見方
路線価図は国税庁ホームページで公開されており、誰でも無料で確認できます。
ここでは、路線価の調べ方と路線価図の見方について解説します。
国税庁「財産評価基準書」を使った調べ方(PC・スマホ対応)
路線価を調べる場合、最初に国税庁ホームページのトップ画面にある「路線価図・評価倍率表」をクリック(タップ)します。

引用:国税庁ホームページ
次に「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」の画面において都道府県を選択し、「路線価図」の「路線価図」、市区町村、地名(町又は大字)の順に選んでいくと該当エリアの路線価図が表示されます。

路線価図の見方:数字とアルファベットの意味を解説
路線価図には、道路ごとに「数字+アルファベット」の組み合わせが記載されています。
数字は路線価であり、千円単位で表示されています。
アルファベットは借地権割合を示す記号で、AからGまでの区分があります。
借地権割合は貸宅地や借地権などを評価する際に用いる割合で、Aが最も高く、Gに近づくほど低くなります。
たとえば「195D」と表示されている道路に接している土地の場合、路線価は19.5万円、借地権割合は60%となります。

引用:令和7年分の路線価図
【5ステップ】路線価を使った土地評価額の計算方法
路線価が設定されている地域に土地がある場合は、次の手順に従って相続税評価額の計算を行います。
具体的な評価額を算定する際には、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を使用し、評価対象地の形状などに応じて画地調整率を乗じる必要があります。


STEP1:評価対象地の評価単位と面積を確認する
土地の相続税評価額は、原則として地目別に評価します。
自宅の敷地など、評価対象地が宅地である場合は、利用単位となっている1区画の宅地ごとに評価額を算定します。
たとえば、自宅の建物が2筆の土地にまたがって建っている場合には、2筆を合わせた全体を一つの宅地として評価します。
そのため、土地評価を行う際は、評価単位の区分と評価単位ごとの面積を正確に確認することが重要です。
STEP2:路線価を調べる
次に、評価対象地が接している道路の路線価を確認します。
路線価は1㎡当たりの価額が千円単位で示されており、国税庁ホームページの路線価図で確認できます。
なお、路線価地域において、評価対象地が接している道路に路線価が設定されていない場合には、税務署に「特定路線価」の設定を申し出るなどの手続きが必要となることがあります。
1つの道路に面している土地の場合
路線価が設定されている道路に接している面が1つの場合は、その道路の路線価を基に評価額を算定します。
2つの道路に面している土地の場合
路線価が設定されている道路に接している面が2つある場合は、どちらを正面路線とするかを決める必要があります。
原則として、各路線価に奥行価格補正率を乗じて算出した金額が高い方を正面路線とします。
たとえば、路線価Aが21万円、路線価Bが20万円であっても、奥行価格補正率を乗じた結果、路線価Bの方が高くなる場合には、路線価Bを正面路線として評価額を算定することになります。
STEP3:土地の形状や条件に応じた「補正率」を確認する
同じ面積の土地でも、形状や奥行、間口の広さは個々に異なります。
そのため、土地評価においては、これらの形状や利用状況に応じて補正計算を行う必要があります。
路線価が設定されている2つ以上の道路に接している土地の場合は、側方路線影響加算や二方路線影響加算を適用することで、評価額が高くなることがあります。
一方、路線価が設定されている道路に接する面が1つの場合には加算補正がないため、基本的には減額補正の有無を確認することになります。
なお、適用される補正率は地区区分によって異なるため、「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」を確認しながら計算することが重要です。
減額補正の主な種類
- 奥行価格補正
- 間口狭小補正
- 奥行長大補正
- 不整形地補正
- 規模格差補正
- がけ地補正
- 特別警戒区域補正
増額補正の種類
- 側方路線影響加算
- 二方路線影響加算

引用:土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31 年1月分以降用)(国税庁)
STEP4:自用地としての評価額を算出する
路線価と適用する補正率を確認したら、路線価に補正率と面積を乗じて自用地としての評価額を算出します。
補正率が1.0の場合は、「路線価×面積」で評価額を求めることができます。
正方形に近い整形地であれば補正計算が不要なケースもありますが、角地や不整形地の場合には補正計算が必要になります。
計算例①:整形地(1つの道路に面している土地)の場合
路線価が「300」、面積が「100㎡」の整形地(補正計算不要)の場合は、路線価に面積を乗じて評価額を算出します。
<整形地の計算例>
300,000円×100㎡=3,000万円(自用地の評価額)
計算例②:角地(2つの道路に面している土地)の場合
角地の土地は、1つの道路に面している土地に比べて利便性が高いため、「側方路線影響加算率」を乗じる必要があります。
地区区分が「普通住宅地区」で、正面路線価が「250」、側方路線価が「200」、面積が「120㎡」の整形地の場合は、次の計算式で評価額を算出します。
<角地の計算例>
250,000円+(200,000円×0.03(側方路線影響加算率))=256,000円
256,000円×120㎡=3,072万円(自用地の評価額)
STEP5:土地の利用状況に合わせて評価額を調整する(貸宅地など)
土地の相続税評価額は、土地の利用状況によっても変わります。
たとえば、借地権の目的となっている宅地(貸宅地)の評価額は、「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合」の算式で評価します。
借地権割合は、路線価に記載されたアルファベットで確認できます。
自用地の評価額が「3,000万円」、借地権割合が「60%」の場合の計算式は次のとおりです。
<貸宅地の計算例>
3,000万円-(3,000万円×60%)=1,200万円(貸宅地の評価額)
なお、貸家建付地や定期借地権等の目的となっている宅地など、利用形態によって評価方法は異なります。
そのため、土地評価の際は、該当する区分を確認することも重要です。
路線価がない地域は「倍率方式」で評価額を計算する
路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額を基準にした「倍率方式」によって相続税評価額を計算します。
倍率方式の確認方法
倍率方式で用いる「評価倍率」は、国税庁ホームページで確認できます。
国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で都道府県を選択し、「評価倍率表」の「一般の土地等用」から市区町村を選ぶと、該当地域の評価倍率を確認できます。
基本的に路線価が設定されている地域には評価倍率表がなく、反対に評価倍率表がある地域には路線価図がありません。
そのため、評価対象地の路線価図がない場合には、倍率方式で評価額を計算することになります。
倍率方式の計算方法と必要な書類
倍率方式の場合、「固定資産税評価額×評価倍率」で相続税評価額を求めます。
たとえば固定資産税評価額が1,000万円、評価倍率が1.1の場合、相続税評価額は1,100万円となります。
固定資産税評価額に評価倍率を乗じる関係上、固定資産税納税通知書など、固定資産税評価額が記載された書類と、評価対象地の評価倍率表の用意が必要です。
倍率方式は路線価方式より計算手順が少ないため、必要書類を揃え、評価倍率を確認すればスムーズに評価額を算出できます。
なお、農地など、宅地以外の土地の評価方法も基本的に同じですが、地目によって評価倍率は大きく異なるため、確認の際には注意が必要です。
相続税の土地評価で損しないための注意点
土地の相続税評価額は高額になりやすく、路線価地域の土地は評価方法が複雑であるため、わずかな見落としでも評価額が大きく変わる可能性があります。
補正率の見落としは過大評価につながる
路線価方式で用いられる補正の多くは、土地の形状などに応じて評価額を減額する方向に働きます。
そのため、補正計算を行わずに土地評価を進めてしまうと、本来より高い評価額が算出される可能性があります。
奥行が短い土地や間口が狭い土地、旗竿地などは、減額補正によって評価額の引下げが見込まれます。
また、形状が歪な土地は不整形地補正によって大幅に減額されるケースもあるため、補正率の確認と適用は欠かせません。
小規模宅地等の特例の適用要件は複雑
小規模宅地等の特例は、一定の条件を満たす土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。
1億円の土地に小規模宅地等の特例を適用した場合、評価額を2,000万円まで減額できるケースもあり、高い節税効果が期待できます。
ただし、小規模宅地等の特例は、土地の利用状況や取得者の属性によって適用要件が異なるため、適用誤りには注意しなければなりません。
たとえば、被相続人の自宅の敷地に適用できる「特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)」の要件は、取得者が配偶者なのか、同居していた親族なのか、別居していた親族なのかによって変わります。
誤った判断をすると、小規模宅地等の特例を適切に活用できないだけでなく、税務署から誤適用を指摘され、後から修正を求められることになります。
そのため、特例の適用判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することが望ましいです。
マンションの敷地評価は難易度が高い
被相続人がマンションを所有している場合、敷地権割合に応じて敷地権(土地)の評価額を算定する必要があります。
令和6年1月1日以後に相続等で取得した「居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)」については、「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」に基づいて評価することが求められます。
マンションの相続税評価は特に専門性が高いため、相続財産にマンションが含まれる場合は、専門家に相談したうえで評価額を算定することが望まれます。
私道や共有地などの評価も要注意
私道や共有地が相続財産に含まれる場合も、評価方法が複雑になりやすい点に注意が必要です。
たとえば、私道は通り抜け道路か行き止まり道路かによって扱いが異なりますし、共有地は所有者の利用状況などによって評価額が変わるケースがあります。
また、道路に接していない宅地(無道路地)についても、通常の土地とは評価方法が異なるため、慎重な判断が求められます。
自分で計算が難しいと感じたら?税理士に相談するメリット
相続税の具体的な計算シミュレーションを行うには、土地の正確な評価額を算定することが欠かせません。
しかし、土地評価には専門知識が求められるため、不安がある場合は税理士に相談することも選択肢です。
適正な評価による節税・還付の可能性がある
土地評価は専門家のチェックを受けることで、見落としによる損失を防ぐことができます。
画地補正は土地ごとに判断する必要があり、適用漏れや適用誤りは過大(過少)評価につながる恐れがあります。
一方、税理士は路線価や補正率の適用の有無などを総合的に判断し、適正な相続税評価額を算出するため、過大評価を抑制することが可能です。
また、既に提出した申告書に評価誤りがあった場合についても、適切な評価により相続税が減額され、還付を受けられるケースもあります。
相続税申告の手間と時間を大幅に削減できる
土地の相続税評価額を算定する際は、資料収集や補正率の確認、評価額の計算などの作業を行います。
相続人が土地評価を行うことも可能ですが、土地の種類や形状によっては、評価するのに多大な時間と労力を要することも考えられます。
相続税申告を税理士に依頼した場合、土地評価を含めた一連の作業を任せられるため、相続人の負担を大きく軽減できます。
複数の土地を所有している場合や、歪な形状の土地が含まれる場合は、相続人のみで正確に計算するのが難しい可能性があるため、早い段階で依頼することを検討すべきです。
税務調査のリスクを低減し、精神的な安心を得られる
税理士に相続税の申告手続きを任せることで、適正な申告ができているという安心感を得られるのもメリットの一つです。
税務署は、提出された相続税の申告書をくまなくチェックします。
ほとんどの相続人は相続税の申告書を作成した経験がないため、相続人が作成した申告書は評価誤りや計算ミスが起きやすい傾向があります。
特に、土地の評価誤りや特例の誤適用などがあった場合、税務調査で指摘を受ける可能性が高まるため注意しなければなりません。
一方、税理士は土地を適正に評価するだけでなく、評価の根拠も明確に示せるため、税務署からの指摘を受けにくく、税務調査リスクの軽減効果が期待できます。
まとめ
市街地にある土地は、基本的に路線価方式で評価することになります。
路線価方式の場合、路線価図の読み方や補正率の確認、土地の利用状況などに応じた評価方法を理解することで、適正な相続税評価額を算出できるようになります。
一方、路線価がない地域では倍率方式を用いて評価することになるため、土地を評価する際は評価方式を確認し、必要書類を揃えたうえで作業を進めることが大切です。
なお、特例や補正率の適用判断を誤ると、相続税額に過不足が生じる可能性があるため、慎重な確認が求められます。
相続税の計算や不動産評価に不安がある場合は、税理士に相談し、必要に応じて申告手続きを依頼することをおすすめします。

相続税に強い
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相続後に、
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例えば・・
- 申告に漏れがあれば、税務署から調査を受け追徴課税を支払う可能性がある
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実際に、
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