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遺贈とは?相続との違いを税金・遺言書・手続きで比較

2026年9月3日
   

遺贈と相続はよく似た言葉ですが、対象者や税金の種類・税率が異なります。相続との比較をし、遺贈の要件や種類、注意点等をご紹介します。

この記事の監修/取材協力

古尾谷 裕昭 税理士

相続専門の税理士法人(VSG相続税理士法人)の代表税理士。同事務所では、年間3,500件の相続税申告を行っており「99%税務調査が入ってこない」「税金を可能な限り安く」「親身に寄りそった対応」という品質で、元国税調査官を招き入れた体制のもとサービスを提供している。

三ツ本 純 税理士

相続専門の税理士(VSG相続税理士法人)。税理士業界に就職した後、10年以上相続税の専門税理士として活動、これまで600件以上の相続税申告に関わっている。横浜出身。書籍「令和3年度版 プロが教える! 失敗しない相続・贈与のすべて (COSMIC MOOK)」など

もくじ

  • 遺贈とは?
  • 相続との違い
    • 遺贈は遺言書が必須
    • 法定相続人以外にも渡せるのが遺贈
    • 遺贈は税負担が重くなるケースがある
    • 不動産登記の手続き【令和5年法改正】
  • 遺贈の2つの種類
    • 包括遺贈
    • 特定遺贈
  • 遺贈における相続税の計算
    • 基礎控除額は増加しない
    • 2割加算される
    • 登録免許税
    • 不動産取得税
  • 遺言書を書く時の注意点
    • 遺留分を侵害しないように配慮する
    • 遺言執行者の指定をする
    • 受遺者の税負担を考慮する
  • 死因贈与との違いとは?
    • 合意の有無 
    • 撤回の可否 
  • 遺贈についてよくある質問 
    • 法定相続人へは遺贈と相続どちらがいいですか?
    • 遺贈によって寄付を行う場合、自治体やNPO法人に譲るとどのような税務上の扱いになりますか?
    • 遺贈によるトラブルを防ぐために、専門家にはどのタイミングで相談すべきでしょうか?
  • まとめ

遺贈とは?

遺贈とは、遺言書を作成することによって、自分の財産の全部または一部を特定の人や団体に無償で譲り渡す行為のことです。遺贈によって財産を受け取る人のことを受遺者と呼びます。

相続との違い

遺贈と相続は、どちらも亡くなった人の財産が別の人に移転するという点では同じですが、仕組みや対象者、手続き、税金面で多くの異なる点があります。

遺贈は遺言書が必須

遺贈をするためには、法律上有効に作成された遺言書が不可欠です。一方で相続の場合は、遺言書の有無は要件となりません。遺言書がない場合には、遺産分割協議を行い、財産の分け方を決めます。

法定相続人以外にも渡せるのが遺贈

相続と遺贈の大きな違いは、財産を受け取ることができる人の範囲です。相続で財産を渡すことができるのは、法定相続人に限定されます。法定相続人は、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などの親族です。どれほど親密な関係であっても、血縁関係のない第三者や内縁の配偶者が相続人になることはありません。

一方、遺贈では、財産を受け取る受遺者を遺言によって自由に指定することができます。法定相続人ではない孫や兄弟、愛するパートナー、さらには学校法人、慈善団体、自治体といった法人や団体に対しても財産を贈ることができます。

遺贈は税負担が重くなるケースがある

財産を人の死亡により引き継ぐ際にかかる税金は、相続であっても遺贈であっても贈与税ではなく相続税の対象となります。しかし、誰が財産を受け取るかによって、実際の税金負担の重さは大きく異なります。

法定相続人が財産を受け取る場合、基礎控除やさまざまな税制上の特例措置、税率の優遇などを最大限に受けることができます。

これに対し、遺贈によって法定相続人以外が財産を受け取る場合、相続税が通常よりも重くなるルールが存在します。また、小規模宅地等の特例や、死亡保険金・死亡退職金の非課税枠が適用できない場合があるなど、税負担が増大するケースが多いため注意が必要です。

財産を渡す側は、受け取る側がどれだけの税金を支払うことになるかを事前に確認することをおすすめします。

不動産登記の手続き【令和5年法改正】

不動産の登記実務において、令和5年4月1日に重要な法改正が施行されました。これまでは、特定の不動産を特定の相続人に「遺贈する」という内容の遺言書があった場合、その登記手続きは単独で行うことができず、遺言執行者または相続人全員と共同で申請しなければなりませんでした。この点が遺贈の手続きを煩雑にする要因となっていました。

しかし、令和5年の改正不動産登記法の施行により、受遺者が相続人である場合に限り、遺贈による所有権移転登記をその相続人が単独で申請できるようになりました。これにより、相続人への不動産の引き継ぎが格段にスムーズになりました。

ただし、受遺者が相続人以外の第三者である場合には、依然として単独での登記申請は認められていません。この場合は受遺者と遺言執行者または他の相続人全員が共同で登記を申請する必要があります。

遺贈の2つの種類

遺贈は、財産の指定方法によって包括遺贈と特定遺贈という2つの種類に分類されます。これらは性質が全く異なるため、それぞれの違いを正しく理解しておく必要があります。

包括遺贈

手持ちの財産を特定せず、「自分の財産の3分の1を贈る」というように、遺産の全体に対する割合を指定して遺贈する方法です。包括遺贈によって財産を受け取る人を包括受遺者と呼びます。

包括受遺者は法定相続人と同一の権利義務を持つと定められています。そのため、包括受遺者は預貯金や不動産といったプラスの財産を受け取る権利を得る一方で、借金や未払金といったマイナスの財産(債務)も指定された割合に応じて引き継ぐ責任を負います。

相続と同様に単純承認・相続放棄・限定承認を選択することができます。債務が多く遺贈を受け取りたくない場合には、相続が開始したことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をしてください。

また、具体的な遺産の分け方を決定する遺産分割協議にも、他の共同相続人と並んで参加しなければなりません。

特定遺贈

特定遺贈とは、「自宅の土地と建物を贈る」「〇〇銀行の預金口座にある100万円を贈る」というように、受け取らせたい具体的な財産を個別に指定して遺贈する方法です。特定遺贈で財産を受け取る人を特定受遺者と呼びます。

特定遺贈の場合、引き継ぐ財産が明確に限定されているため、遺言書に明記されていない限り、亡くなった人の借金や債務を引き継ぐ義務はありません。

また、遺産分割協議に参加する必要もなく、遺言者が亡くなった瞬間に指定された特定の財産を受け取る権利が発生します。

財産の内容が明確で、他の親族とのトラブルに巻き込まれにくいため、法定相続人以外の人に特定のものを譲りたい場合によく利用される方法です。

遺贈における相続税の計算

遺贈によって取得した財産には、相続税が課税されます。税金の基本的な計算は一般的な相続と同様ですが、法定相続人と比べ、適用される控除や特例、および適用される税率に大きな違いが生じます。

基礎控除額は増加しない

相続税の課税対象となる遺産総額から差し引くことができる基礎控除額は、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」という数式で計算されます。このルールは遺贈が行われた場合でも変わりません。

ただし、孫や内縁の配偶者、友人などの法定相続人以外の第三者に遺贈をした場合であっても、その第三者は基礎控除額の計算における法定相続人の数に含まれないという点です。

つまり、遺贈によって財産を受け取る人がどれだけ増えても、基礎控除額が大きくなることはないということです。あくまで、法定相続人の人数だけで基礎控除額が算出されます。

2割加算される

相続税額の2割加算とは、配偶者や子供、親以外の人が相続や遺贈によって財産を取得した場合、その人が負担すべき相続税額を2割増しにするという制度です。

法定相続人ではない兄弟姉妹や代襲相続人ではない孫、甥や姪、内縁のパートナーなどの第三者に遺贈する場合、算出された本来の相続税額に1.2を掛けた額を納税しなければなりません。

受遺者に対して過度な税負担を強いることのないよう、あらかじめこの2割加算の影響を考慮して遺言書を作成することが不可欠です。

登録免許税

不動産を遺贈され、自分の名義に書き換える所有権移転登記を行う際には、登録免許税という税金を国に納める必要があります。この登録免許税の税率も、受遺者が相続人であるか否かで5倍もの差が生じます。

具体的には、遺贈を受ける人が法定相続人である場合の登録免許税の税率は、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。一方で、遺贈を受ける人が法定相続人ではない第三者の場合、登録免許税の税率は評価額の2.0%に跳ね上がります。

例えば、評価額3,000万円の土地を登記する場合、相続人であれば12万円の税金で済みますが、第三者の場合は60万円もの負担になります。

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を売買や贈与などによって取得した際に都道府県から課される地方税です。通常の相続によって不動産を取得した場合は、この不動産取得税は非課税となります。

包括遺贈の場合 

包括遺贈を受けた場合も、相続人と同様の地位を持つため、受遺者が誰であっても不動産取得税はかかりません。

特定遺贈の場合 

法定相続人ではない人が特定遺贈によって不動産を取得した場合には、原則として不動産取得税が課税されます。税率は原則として固定資産税評価額の3%(住宅や土地の場合)または4%となります。

登録免許税に加えて不動産取得税も発生するため、相続人以外の人が特定遺贈で不動産を引き継ぐ際は高額な費用がかかる傾向にあります。

遺言書を書く時の注意点

遺言書を作成する際に、法定相続人や受遺者の負担を考慮することが必要です。

遺留分を侵害しないように配慮する

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障されている遺産の取り分のことです。遺言者の意思は尊重されますが、残された家族の生活保障も重視されるため、民法によってこの権利が保障されています。

もし、法定相続人以外の第三者に「すべての財産を遺贈する」という内容の遺言書を残した場合、本来の相続人は自分の遺留分を侵害されたとして、受遺者に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます。この請求が行われると、受遺者は侵害した遺留分に相当する金銭を支払わなければならなくなり、金銭トラブルや親族間の関係悪化に発展してしまう可能性があります。

遺贈を行う際は、あらかじめ各相続人の遺留分の割合を把握し、遺留分を侵害しない範囲で財産の分配を設定するか、もし侵害せざるを得ない場合は事前に家族と話し合いを重ねることが重要です。

遺言執行者の指定をする

遺言執行者とは、遺言書の内容通りに預貯金の解約や不動産の名義変更、受遺者への財産の引き渡しといった実務手続きを行う権限と責任を持つ人のことです。遺贈の履行は遺言執行者だけが行えます。

遺言執行者を指定しておくことで、受遺者と遺言執行者だけの意思で手続きを完了させることができます。

また、不動産を特定遺贈する場合、遺言執行者が指定されていないと、登記手続きにおいて受遺者と相続人全員が共同で申請作業を行わなければなりません。相続人が協力的でない場合のリスクを回避できます。

受遺者の税負担を考慮する

遺贈による税負担は、相続による税負担よりも大きくなりがちです。そのため、相手の経済状況や税負担を考慮しない遺贈は、結果として相手を苦しめることになってしまうこともあります。また、包括遺贈の場合は、亡くなった人の知らなかった債務まで背負わせてしまう危険性があります。

死因贈与との違いとは?

遺言によって財産を贈る遺贈とよく似た言葉に、死因贈与があります。どちらも「自分が亡くなったことをきっかけに財産を相手に譲る」という点では共通していますが、成立要件や性質が異なります。

合意の有無 

遺贈と死因贈与の大きな違いは、単独の意思表示であるか、双方の合意に基づく契約であるかという点です。遺贈は遺言者が一方的な意思表示で行うものであり、受け取る側の承諾は必要ありません。

これに対し、死因贈与は「私が死んだらこの財産をあなたにあげます」「分かりました、いただきます」という、生前の双方の合意に基づく贈与契約です。口頭でも成立しますが、後日のトラブルを防ぐために死因贈与契約書などの書面を作成するのが一般的です。

撤回の可否 

遺贈は遺言者の意思でいつでも内容を一方的に撤回・変更できますが、死因贈与は契約であるため、原則として一方的な都合で簡単に取り消すことはできません。

遺贈についてよくある質問 

遺贈についてよくある質問にお答えしました。

法定相続人へは遺贈と相続どちらがいいですか?

法定相続人に対しては「遺贈する」「相続させる」どちらで記載しても登録免許税の税率は変わりません。

遺贈によって寄付を行う場合、自治体やNPO法人に譲るとどのような税務上の扱いになりますか?

国や地方公共団体、特定の認定NPO法人、公益社団・財団法人などに遺贈寄付を行った場合、その寄付された財産については相続税が非課税となる特例が適用されます。

ただし、不動産や株式などの「現物」を寄付する場合、遺言者が死亡した時にその財産を「時価で売却して得た利益を寄付した」とみなされ、遺言者の準確定申告において「みなし譲渡所得税」が課税される場合がありますが、こちらも国や地方公共団体、特定の認定NPO法人に譲渡した場合、非課税となる特例が適用される場合があります

このため、団体に遺贈した場合の税制がどうなっているのかを先に確認しておくとよいでしょう。また、団体によっては、現物では寄付を受け付けないこともありますので、どのような形態で寄付を受け付けているのか事前に調査しておく必要があります。

遺贈によるトラブルを防ぐために、専門家にはどのタイミングで相談すべきでしょうか?

なるべく早い段階で相談することをおすすめします。実際の財産構成や家族関係をもとに、遺留分の計算、受遺者の税務リスク、遺言執行者の選定などをシミュレーションしてから遺言書を作成することで、修正や加筆しやすくなります。

まとめ

遺贈は遺言書によって残された人に財産を残す制度です。相続とは違い、法定相続人以外も受遺者とすることができるため、孫や内縁のパートナーへ財産を渡したい方にとって有効な制度となります。しかし、遺贈をするためには、有効な遺言書の作成が必要です。また、不動産登記手続きの複雑さ、遺留分を巡る親族間での対立といったリスクもあるため受遺者への配慮もかかせません。遺言書作成や受遺者への負担等の不安がある場合は税理士などの専門家へ相談してください。

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例えば・・

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実際に、
令和2年には、5,106件の税務調査が行われ、1件あたりなんと943万円の追徴課税が課されています。
相続に強い税理士がついていれば、まず税務調査に発展する可能性も低く、
追徴課税を受けるような抜けや漏れもないため、安心して相続税申告を終えることができます。

相続後の生活は、相続に強い、良い税理士に出会えるかどうかで決まるといっても過言ではないのです。

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